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長崎地方裁判所佐世保支部 昭和55年(わ)179号 判決

主文

被告人長岡尚〓を懲役一年六月に、被告人渋村武敏を懲役二年に、被告人山川良彦を懲役一年六月に、被告人齊藤半五郎を懲役一年に処する。

ただし、本裁判確定の日から、被告人山川良彦に対し五年間、その余の被告人らに対しいずれも四年間、それぞれその刑の執行を猶予する。

被告人渋村武敏から金二〇万円を、被告人山川良彦から金一〇万円を、被告人齊藤半五郎から金一〇万円を追徴する。訴訟費用中、証人山川良彦、同福田幸広、同橋本豪夫(第一回)に支給した分は被告人長岡尚〓の、証人中野一文に支給した分は被告人渋村武敏の、証人田川繁に支給した分は被告人山川良彦の、証人齊藤久雄、同中原武、同坂口庄五郎に支給した分は被告人齊藤半五郎の、証人豊永静男、同山川英次、同長岡幸子、同吉山正、同横山祐子、同橋本豪夫(第二回)に支給した分は被告人長岡尚〓、同山川良彦の、証人松島道博に支給した分は被告人山川良彦、同齊藤半五郎の、証人門西栄一に支給した分は被告人全員の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人らは、昭和五五年六月二二日施行の衆議院議員総選挙に際し、長崎県第二区から立候補した松田九郎の選挙運動者であるが、

第一  被告人長岡は、同候補者に当選を得させる目的で

一  右同月八日、同県壱岐郡郷ノ浦町本村触五一九番地七の壱岐第一ホテル一階ロビーにおいて、同候補者の選挙運動者である山川良彦に対し、同候補者のため投票取りまとめ等の選挙運動をすることの報酬及び費用として、現金二〇万円を供与し

二  同月一二日ころ、同ホテル二階二〇一号室において、同候補者の選挙運動者である渋村武敏に対し、同候補者のため投票取りまとめ等の選挙運動をすることの報酬及び費用として、現金二五万円を供与し

第二  被告人山川は、

一  同月八日前記壱岐第一ホテル一階ロビーにおいて、同候補者の選挙運動者である長岡尚〓から、同候補者に当選を得させる目的のもとに同候補者のため投票取りまとめ等の選挙運動をすることの報酬及び費用として供与されるものであることを知りながら、現金二〇万円の供与を受け、

二  同月一五日ころ、同候補者に当選を得させる目的で、同県壱岐郡石田町印通寺浦一三八番地の齊藤半五郎方において、同候補者の選挙運動者である齊藤半五郎に対し、同候補者のため投票取りまとめ等の選挙運動をすることの報酬及び費用として、現金五万円を供与し

三  同月一九日ころ、前同目的で、前記郷ノ浦町郷ノ浦三五番地一の松田九郎連絡事務所において、右齊藤半五郎に対し、前同趣旨のもとに、現金五万円を供与し

四  昭和五八年四月二四日施行の石田町町議会議員選挙に際し、同選挙に立候補することを決意していた者であるが、自己の当選を得る目的で、その立候補届出前である同月四日ころ、長崎県壱岐郡石田町印通寺浦三八二番地田川繁方において、同選挙区の選挙人である同人に対し、自己のため投票並びに投票取りまとめ等の選挙運動を依頼し、その報酬等として現金一〇万円を供与し、一面立候補届出前の選挙運動をし

第三  被告人渋村は

一  昭和五五年六月六日ころ、佐世保市上京町三番二号のセントラルホテル一階ロビーにおいて、前記松田九郎候補の選挙運動者である浦田フミ子から、同候補者に当選を得させる目的のもとに同候補者のため投票取りまとめ等の選挙運動をすることの報酬及び費用として供与されるものであることを知りながら、現金一〇万円の供与を受け

二  同月一二日ころ、前記壱岐第一ホテル二階二〇一号室において、同候補者の選挙運動者である長岡尚〓から、同候補者に当選を得させる目的のもとに同候補者のため投票取りまとめ等の選挙運動をすることの報酬及び費用として供与されるものであることを知りながら、現金二五万円の供与を受け

三  同月七日、同候補者に当選を得させる目的で、同県壱岐郡芦辺町諸吉東触六一一番地四外の芦辺町清石浜駐車場において、同候補者の選挙運動者である中野一文に対し、同候補者のため投票取りまとめ等の選挙運動をすることの報酬及び費用として、現金五〇万円を供与し

四  同月一八日ころ、前記郷ノ浦町郷ノ浦一五二番地四の先路上において、同候補者の選挙運動者である齊藤半五郎に対し、同候補者のため投票取りまとめ等の選挙運動をすることの報酬及び費用として、現金五万円を供与し

第四  被告人齊藤は

一  同月一五日ころ、前記石田町印通寺浦一三八番地の自宅において、前記松田九郎候補の選挙運動者である山川良彦から、同候補者に当選を得させる目的のもとに同候補者のため投票取りまとめ等の選挙運動をすることの報酬及び費用として供与されるものであることを知りながら、現金五万円の供与を受け

二  同月一八日ころ、前記郷ノ浦町郷ノ浦一五二番地四の先路上において、同候補者の選挙運動者である渋村武敏から、右同趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら、現金五万円の供与を受け

三  同月一九日ころ、同県壱岐郡郷ノ浦町郷ノ浦三五番地一の松田九郎連絡事務所において、前記山川良彦から、右同趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら、現金五万円の供与を受け

四  齊藤久雄と共謀のうえ、同候補者に当選を得させる目的で、同月一九日ころ、前記郷ノ浦町本村触五一九番地一一の飲食店味よしこと末永征人方において、同選挙区の選挙人である中原武他三名に対し、同候補者のため投票並びに投票取りまとめ等の選挙運動をすることの報酬等として、現金一〇万円を供与し

五  同月二〇日ころ、前同目的で、前記石田町印通寺浦四六九番地六の前記齊藤久雄方において、同候補者の選挙運動者である右齊藤久雄に対し、同選挙区の選挙人らに同候補者のため投票並びに投票取りまとめ等の選挙運動をすることの報酬等として供与すべきものとして、現金一〇万円を交付し

たものである。

(証拠の標目)(省略)

(法令の適用)

被告人長岡の判示第一の一、二、被告人山川の判示第二の二、三、被告人渋村の判示第三の三、四、被告人齊藤の判示第四の四の各所為

公職選挙法二二一条一項一号、なお第四の四については刑法六〇条(各懲役刑選択)

被告人山川の判示第二の一、被告人渋村の判示第三の一、二、被告人齊藤の判示第四の一、二、三の各所為

公職選挙法二二一条一項四号、一号(各懲役刑選択)

被告人山川の判示第二の四の所為

供与の点 公職選挙法二二一条一項一号

事前運動の点 同法二三九条一項一号、一二九条

観念的競合 刑法五四条一項前段、一〇条(供与罪の刑で処断し、懲役刑選択)

被告人齊藤の判示第四の五の所為

公職選挙法二二一条一項五号、一号(懲役刑選択)

併合罪加重 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(被告人長岡については第一の二の罪の刑に、同渋村については第三の三の罪の刑に、同山川については第二の四の罪の刑に、同齊藤については第四の四の罪の刑に加重)

各刑の執行猶予 刑法二五条一項

各追徴 公職選挙法二二四条後段(被告人渋村の第三の二の、同山川の第二の一の、同齊藤の第四の一、三の各犯行により収受した利益につき)

訴訟費用の負担 刑訴法一八一条一項本文

よつて主文のとおり判決する。

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